「悟浄、見てくれ」
「あ? ……あ?」

 焔の声に振り返れば、奴は笑顔でぬいぐるみを抱いていた。
 小さくて四角い黒豚と、それに比べれば大きいカッパ。

「ほむブーとごじょーだ」
「頼むから、成人男性にぬいぐるみはやめてください」
「かわいいのに?」
「かわいいのに」

 俺の返答に焔は唇を尖らせる。拗ねたような不服の表情だ。この表情は、急に彼を幼く見せる。

「悟浄は会社だと寂しいだろう? おれだと思って肌身離さず持っていろ」

 焔はぐいぐいと、黒豚――おそらくこっちがほむブーであろうぬいぐるみを押しつけてくる。俺はそれをやんわりと返した。

「いらねぇよ。そいつがカッパと離れたら悲しがるだろ」
「ほむブーは悟浄の方が好きだぞ」

 なにを意地になっているのか、引かない焔に胸中でため息をつく。

「じゃぁ、そいつとお前、どっちの方が俺のこと好きなんだ?」
「おれに決まっているではないか」

 むすっとした表情のまま抱きついてくる焔に、俺は軽く背中を撫でてやった。
 最近寂しかった焔。

 ちなみに、ほむブーはモノクロブーの黒い方で、ごじょーはましゅまろぴろーのカッパです。
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