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「なぁ、なんで悟浄は木登りしないんだ」
「は?」

 久しぶりの一人部屋で、これから密か事を始めようかと気怠い雰囲気を作っているのに、唐突な質問で悟浄は目を瞬かせた。この男はいきなりなにを言い出すのか。
 色気もムードも吹き飛ばした焔は、相変わらずどこか幼児然とした表情で見上げてくる。

「桜の木を見たら、登ってお酒呑みたいとか思わないのか?」
「なんでそんなこと思わなきゃなんねぇのよ」

 行為を中断された悟浄は、不機嫌さを露骨に浮き立たせるが、焔はおかまいなしに目尻を指先で撫でる。

「捲簾はよく登っていたから」

 捲簾。焔の昔の恋人の名に、悟浄の片眉はピクリと持ち上がった。
 悟浄の前世であるらしいが、記憶はないので別人と同じだ。妬いても意味のない相手だと理屈では判っていても、感情までは制御できない。
 威圧するように目を細める。

「俺とそいつ、どっちがいいんだ?」
「ん?」

 焔はきょとんと瞬きを一回すると、笑顔とともに悟浄に抱きついた。

「今は悟浄に決まってるではないか」

 焔の返答に、悟浄は胸中でため息をついた。
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