「八戒、あの草はなんだ! 人が生えてきやがったぞ!!」
「あー、生えちゃいました?」
「生えちゃいましたじゃねぇ。あれは一体なんだ」
「僕もよく判らないんですよね。天蓬の研究品ですし」
「奴はなにを作ってるんだ」
「……さぁ?」

 悟浄がもらった植物から人が生まれた。あまりの非常事態に悟浄は捲廉をたたき起こし、元の持ち主に連絡をとっている最中だ。どんな答えが返ってくるにしろ納得できるわけはないのだが、対処法ぐらいは判るかもしれない。そんな理由で悟浄は電話に向かって叫んでいるのだ。
 そして毎日面倒をみていた捲廉はといえば、生まれてきた人間と交流を図っている。
「お前、しゃべれるのか?」
 首をかしげる植物。
「まぁ、そのサイズじゃしゃべれても聞こえないか。何食うんだ?」
 考えるそぶりをみせる植物。
「土か?」
 全力で首を振られた。
 どうやら土は食べれないらしい。
「じゃぁ、野菜か? それともそれだと共食いか?」
 困った表情をされてしまった。
「とりあえず、いろいろ試してみるか」
 捲廉は冷蔵庫の中を漁ろうと、席を立った。

「なにか判ったらすぐに連絡しろよ。じゃぁな」
 悟浄は乱暴に電話を切ると、盛大なため息とともに脱力した。精神的に疲れてしまったらしい。
「どうだった」
「犯人は八戒じゃなくて天蓬の方だったらしい」
「あいつらしいな」
 捲廉は肩を竦めるだけに終わった。天蓬のいざこざには慣れているらしい。どう考えても今回の事件は常軌を逸しまくっているが。
「とりあえず、名前は焔っていうらしい」
「そういやぁ、お前そんなこと言ってたっけ」
「そうだったか?」
 冷蔵庫の中に頭をつっこんでいる捲廉に、腕を組みながら言葉を投げかける。
「んで、あんたは今なにやってんの」
「食べ物調査だ。飢え死にさせたらかわいそうだろ」
「あぁ、そう」
 順応性の高い人間だ。あまりディープに考えていないのかもしれない。
「なぁ、肉ねぇか」
「熱いモン食えねぇだろ。箸ねぇし」
「あぁ、そっか」
 妙な点に納得した捲廉は、とりあえず野菜とご飯だけを与えることにした。

「ほら、食えるか?」
 自分の身体より大きな皿に盛られた食べ物を見て、植物──もとい焔は、喜色を満面に映した。両手でご飯を鷲づかみにし、口いっぱいに頬張る。
 頬を食べ物で膨らます様はまるで──
 
 ハムスターみてぇだ。

 この家の住人男二人は、植物の食い意地を見てそんなことを考えた。 
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