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 ベージュの壁、白い部屋。冷えた空気、揺れるカーテン。

 ブラウンのフローリングに投げ出された白い脚。
 指先が冷えて痛い。曲げることによって熱を補おうとするが効果はゼロ。

 白いシャツ、黒いズボン、流れる空気。ヒーターの熱と冬の風がぶつかり、暖かいのに冷たい。熱を閉じこめない部屋。薄着で寒い。

 カスタードクリーム、粉砂糖、ベタベタの指。
 口の周りにクリームがへばりつき、舌先で拭う。指についた砂糖をこすりつけたシャツはクタクタ。

 倒れた箱、ごっちゃになったドーナッツ、減りゆく中身。
 味わいもせず吸収されていくカロリー。甘味の麻痺した味蕾。それでも食べることをやめない。

「……なにしてんだ?」
 くすんだ金髪、空色の瞳。そして低い声。

「苛立ったら腹が空いた」
「寒いだろ。窓ぐらい閉めろ」
「腹を立てていたらどうでもよくなった」
「おめぇらしくもねぇ。どうしたんだ?」
「忘れた」

 ブルージーンズが視界を横切る。ガラスが嵌る。ヒーターの音が大きくなる。
 それを追いかける、視線。

「あー、てめぇ半分以上食ってんじゃねぇか」
「他に食べ物がなかった」
「作ればよかったじゃねぇか」
「面倒くさかった」

 ドーナッツを食べ終えるとベタベタの指だけが残った。舌先で清め、唾液をシャツに押しつける。

「お前いい加減にしろよ」
 瞳の高さがそろう、全貌が見える、空に吸い込まれる。
 バツが悪くなり、視線を外す。

「すまなかった」
「自暴自棄になるのもヤケ食いすんのもいいが、余所にまで迷惑持ち込むな」
「迷惑だったか?」

 オウム返しの問いだったのに、困惑した表情をされた。面白い。

「迷惑じゃねぇよ。ほら、着替えてこい」
「あぁ」

 腕をつかまれ立ち上がる。

 白い生活、清潔な空間、生きている緑。
 そこにそぐわないギトギトなシャツと指を排除するため、ドアの向こうへと消えた。
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