悟浄がソファでくつろいでいると、焔がトレイに缶ビールと枝豆を載せてとなりに座った。珍しく気の利いたことをと視線をそちらへ向けると、焔は満面の笑みを浮かべていた。くだらない下心のある顔だ。
 悟浄はそれに気づかないふりをして、ビールのプルトップに指をかけた。
「なぁ悟浄、今日は記念日だな」
「ん? そうだっけか」
 悟浄も決して今日という日を忘れていたわけではないのだが──忘れたくても、カレンダーにでかでかとハートを書かれていたら忘れることができない──焔がつけあがることがわかっているので、そらっとぼけることにした。
 しかしそんなことも、焔はちゃんと見抜いているのかマイペースに話を続ける。
「ということは、今日は悟浄は思いっきりおれを甘やかす日だな!」
「え、いつからそういうシステムに変わったの?」
「今年!」
「あぁそう」
 無駄に元気な焔にそっと背を向けようとするが、それよりも先に抱きつかれた。胸元に頭を押し付けてくる。
「だからおれのこと抱きしめていいぞ。頭撫でていいぞ。キスしていいぞ」
「焔、ビール飲めない、枝豆食えない」
「ん? 口移し?」
「お前ビールむせるだろ」
 胸元に顎をぴったりと押しつけたまま見上げてくる焔の頭をぽんぽんと叩き、奥の部屋を視線で示す。
「あっちに置いてある鞄の中に、イイモンあるから取ってこい」
「いい物ってなんだ?」
「見りゃぁすぐにわかる」
 焔は不思議そうな瞳でじっと見つめていたが、やがてキスを一つ残すと隣の部屋へ駆けていった。やっと開放された悟浄は、まだ開けただけの缶ビールに口を付ける。最近やっと暑くなってきたからビールが美味い。
 枝豆を食べようと手を伸ばしたとき、焔が悟浄の名を叫びながら戻ってきた。勢いを殺さぬまま抱きつかれ、悟浄はソファに倒れこむ。口に入るはずだった枝豆が、ポーンと天井へ舞った。
「俺の枝豆……」
「プレゼントありがとう」
「お前、これがビールだったら殴ってるところだぞ」
 やたらと懐いてくる焔は悟浄の小言が聞こえていないのか、じっと喜びをかみしめている。
 そこまで喜んでくれたのなら見逃してやるかと、悟浄はため息を一つついて黒髪を撫でた。
「で、プレゼントの感想は?」
「まだ見てない」
「見てから喜べ」
 不機嫌そうに眉根を寄せた悟浄へ、焔はもう一度口づけをした。

----------------
たとえ中身が小石だろうが、うちの焔は喜びます。
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks


    最近の記事