くすぐったい感覚にタガーは目を覚ました。伏せていた顔を上げれば、すぐとなりに転がっているマンカスがタガーの髪の毛をいじっているのだとわかった。それにタガーは機嫌を悪くするでも良くするでもなく、また顔を伏せた。
「……なんだよ」
「いや、子供のころと変わらないなと思って。毛の色」
「ったりめぇだろ」
 そう簡単に毛の色が変わってたまるかと小さく毒づく。タガーもマンカスも、小さかったころからこの色だ。
「タガー、起きたのなら寝るな。バブを迎えに行く」
「俺には関係ねーよ」
 マンカスがどこに行こうがタガーには関係ない。そんなことよりももう少し眠っていたかった。
「寝るのは他の部屋にしてくれ。バブに訊かれたら困る」
「……潔癖性」
 多大な呆れとわずかな怒りをこめて呟いた。
「それなら、ハナから自分の寝床によぶな」
「……昨日は、いろいろと、仕方がなかった」
「馬鹿」
 タガーは頬杖をついて、わざと大きな溜息をもらした。
 シラバブは昨夜からジェニエニドッツの家に泊まりに行っている。初めての外泊を経験してから、いろんなねぐらでお世話になるのことを気に入ったらしい。外泊するのに必要な荷物をつめたリュックを常に用意している。
 シラバブを溺愛しているマンカスは、その度に荒れるのだから迷惑なことこの上ない。
 昨夜もシラバブのことを無駄に心配しながら部屋の中を何度も往復し、しばらくすると冷静になったのか黙り込み、今度は別のことで落ち着かなくなり、現在に至る。
 これを馬鹿と呼ばずして、一体何と呼ぶ。
「タガー、本当に起きてくれ」
「お前のせいで動けねー」
 タガーは悪態をついてみせるが、マンカスは言葉を詰めて黙ってしまった。自覚はあるらしい。
「ったく、バブがいねぇからって無茶しやがって」
「それはお前も同じだろう」
 マンカスは声を強く出した。自覚はあっても認めたくはないらしい。潔癖性のこの男らしい、実に可愛げなのない反応だ。
「じゃ、あいこってことで勘弁してやる」
 マンカスを言い負かすことよりもまだ寝ていたかったタガーはもう一度布団につっぷす。今度は本格的に寝る準備だ。
 しかしそれも中断させられた。肩と腰に手が添えられたかと思ったら、体が宙に浮いたのだ。そしてマンカスの肩に着地する。
 つまり、担がれた状態だ。
「……俺は荷物か?」
「荷物だ」
 悪びれもしないマンカスに舌打ちをした。このまま別の部屋に移されるのだろう。
 タガーとマンカスの悪態をつき合う関係は、子供のころから変わっていない。これからもずっと、憎まれ口をたたき合うと思う。
 ならなぜ昨夜のような状態になるのかと問われれば、子供のころからの関係の上に、新しい関係がほんの少しだけプラスされたのだと答える。
 毛のツヤは変わるが、その色までは変わらないように、二匹の関係は変わりはしない。
「……お前、俺が起きたときすぐに朝飯が食えるよう準備しとけよ」
「……あぁ」
「たまごとアスパラとトマトとチーズとふんだんのハムをエッグマフィンに挟んでおけ。温かくねぇよ嫌だからな」
「お前は注文が多すぎだ」
 マンカスは溜息をつくと、いつもタガーが寝てる布団の上に放り捨てた。
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初めて、露骨な関係を書いたよ。
うちの二匹は、まぁこういう関係なんですが、根本的な部分は友情で出来ているっていう、そういう話。
コレ以上露骨な関係は、きっと書けない(笑)
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