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「たでーまー」

 ドアの開閉音とともに、我が家の住人が帰ってきた。目立つ赤髪の男。
 リビングに入ってきた姿は、去年と同様紙袋一杯にチョコを入れている。このおれという存在がいながら、いったい誰にいい顔をしているのやら。

「今年も大漁だな」
「やっぱいい男っては、放っておいてもモテるみてぇよ」
 自慢げに目を細めてウィンクを寄越してくる。おれがこの程度では怒らないという自信があるらしい。

「ま、それはすべておれが食べるんだけどな」
「捨てるのももったいねぇしな」

 悟浄は肩をすくめて紙袋をこちらに渡した。
 手作りとおぼしきラッピングに、有名な菓子店の包装紙。そしてスーパーやコンビニで見かけるパッケージ。この中のいったいどれほどが本命で、どれだけが義理なのか。
 手紙でも添えられていないことには判別できないが、愛情や念とともにすべておれが消化する。
 悪く思わないでくれ。こいつはおれのなんだ。

 無造作に箱を一つとりだし、中を改める。これは店で買ったものだから問題はないだろう。手作りだとごくまれに嫌がらせとしか思えない代物がまぎれている。高級チョコも呪いのチョコも、すべて悟浄の人柄が故のものだ。
 口に放り込むと、甘い匂いと味が体を満たす。美味い。

「甘いものが嫌いだなんて、不幸だな」
「いーんだよ、俺は。酒の美味さが判らねぇヤツよりマシだ」
「なら、おれがチョコの美味さを教えてやろうか?」
「あ?」

 ソファにふんぞり返って、煙草をとりだしかけた悟浄は怪訝そうな顔をした。
 おれは用意していた一口チョコの包みをほどき、目の前で口に含む。そして彼の首に両腕をまわした。

「じっくり味わえ?」
「俺好みじゃなかったら、責任とれよ?」

 ニヤリと笑んだ悟浄に、俺は口唇を重ねた。
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