やたらと大きな荷物が家に届いた。
 インターホンの呼び出しに応じ玄関のドアを開けたら、百点満点の営業スマイルを浮かべた宅配のお兄さんが汗を掻きながら、薄いけれど大きなダンボール箱を抱えて両腕をぷるぷると震わせていた。僕はとっさに道を開け、玄関に荷物を置いてもらった。ダンボール箱には大手総合通販会社のロゴが印刷してあった。首を傾げる。サインを求められた受領書には一緒に暮らしているウルフウッドの名前が記されていた。珍しく通販で買い物をしたらしい。それもこんな大荷物。代引きでやや高めな金額だったけれど、休日だから彼はまだ眠っている。仕方なく僕の財布からお金を出して、サインをした。
 ドアを閉めると引きずりながらリビングに運んだ。何を注文したのか正直とても気になるが、勝手に開封したら、彼は口から火を噴いてピコピコと怒る。仕方なく彼が起きるまで放置することにした。テレビ番組が一つ終わった頃にやっと寝室から出てきた。大きな欠伸をすると目尻に涙をこさえて、ティーシャツの裾から手を入れてお腹をボリボリと掻いて、寝癖は跳ねて、だらしない。まだ眠そうに剣呑な目つきをしていたが、荷物が届いたよと指差すと、眼をぱっちりと開いて破顔した。僕にではなくダンボール箱にだ。
 ペン立ての中からカッターナイフを取り出し、厳重に封をしているガムテープを切っていく。僕はテレビの方に体を向けたまま、わくわくと動く背中を観察する。彼が注文したのはテーブルだった。僕は目の前にあるローテーブルに目をやる。
 本当はイス付きのテーブルが良かったのだけれど、寛ぐなら床に座りたいと彼が言うものだから、イス付きはダイニングに置いてもう一つローテーブルを購入したのだ。彼は家の中を飾ることに興味が無いから選んだのは僕だ。木目が残る落ち浮いたブラウンのテーブルで、男の暮らしに中々似合っていると思う。サイズもぴったりだ。ウルフウッドも文句を洩らしたことは一度もない。それに比べて新しく開梱されたテーブルは、同じ木目調だけれどだいぶ明るい色合いで、有り体に言ってしまえば安っぽいとか子供っぽいとか、そんな印象だ。僕は自分で選んだテーブルを睨みつける。絶対にこっちの方が格好いい。
「おら、オンドレも手伝え」
 組み立て前のテーブルの脚で頭を突かれた。
 僕達が馴染んでいたテーブルはウルフウッドが寝室の方へ運んでしまった。僕は渋々新しいテーブルのパーツを広げる。そうして初めて、何故彼がこれを買ったのか気づく。天板の裏には大きな装置。
「こたつだ」
「なんやと思っとったんや」
 僕はこたつとは縁のない生活を送ってきたけれど、ウルフウッドが好きなのは度々聞いていた。そういうことなら、僕のテーブルが負けたことも頷ける。でもそれならそうと、買う前に一度ぐらいは相談して欲しかった。
 僕がテーブルの脚を支えてウルフウッドがドライバーで留める。パーツは少ないからすぐに完成した。延長コードを彼が用意している間に、同梱されていたこたつ布団を僕が広げる。こげ茶色のそれはふかふかとして気持ちよさそうだ。両腕を開いてそこに倒れ込み、柔らかさと暖かさを堪能する。サボるなと背中を何度も蹴られた。めげずに頬ずりすると強く蹴っ飛ばされた。布団を抱き締めたままラグの上を転がる。
 ウルフウッドはコンセントを差すと毛布も設置した。ぽんぽんと叩いて形を整える。我が家にもこたつ文化が到来だ!
 さっそく入ろうとしたら全力で阻止された。物事には順番があるのだと真剣な説教を食らう。唇を尖らせて抗議したが聞く耳持たずだ。
 ウルフウッドはしゃがみこみ、スイッチを片手に布団を持ち上げて中を覗き込む。そこには何もないはずだけれど。
「三、二、一、オラ!」
 スイッチをオンにすると当然中はオレンジ色に光る。ウルフウッドは満足そうに微笑むとこたつの中に足を入れた。
「入ってもええよ」
「子供みたい」
 こたつデビューをしたばかりの両脚は、思いっ切り蹴っ飛ばされた。


 ウルフウッドはこたつ生活を豊かにするために尽力した。
 こたつのシステムでは背中を暖めることはできない。いつの間にか大きな半纏を着てこたつに潜るようになった。自分で服を買うことなど滅多にないあの男が! お揃いで赤い半纏も買ってくれていたので、僕も同じ格好をしてこたつに潜るようになった。
 大きなカゴに盛ったみかんも置かれるようになった。みかんは十キロ入りぐらい箱をまとめて買ったみたいで、部屋の隅にみかん箱が増えていた。僕達はテレビを見ながらひたすら剥いてひたすら食べた。二人揃って指先が黄色くなった。手の平を見せ合って笑う。
 猫はこたつで丸くなると言うが、我が家のウルフウッドもご多分に洩れずだ。家にいるときはこたつの中で生活をする。テレビを見たり、煙草を吸ったり。昼寝をするときは肩まで潜り、僕の伸ばした脚を邪魔だと容赦なく蹴ってくる。我侭だ、横暴だ、と反発するのだけれど、背中を向けて丸くなるので聞き入れられたことはない。僕は不満顔のまま彼の脚と脚の間に自分のを捩じ込んで絡ませる。こうすると少し怒りが和らぐ。そのまま夜中まで眠ってしまいそうなときは流石に体を揺する。
「ウルフウッド、寝るならベッドに行きなよ」
「眠い」
「そうだね。それならベッドの方がいいだろう。ふかふかだし、寝心地いいよ」
「寒い」
「ベッドに入っちゃえば暖かいよ」
「運んでぇな」
「え、お姫様抱っこしていいの?」
「絶対に嫌や」
 それでも起きないウルフウッドをひたすらにつっついて移動させるのが僕の仕事だ。
 僕もうっかりテーブルに突っ伏して寝てしまう日もある。優しさなのか意地悪なのか判らないけれど、ウルフウッドが起こしてくれることはあまりない。でも黒い半纏が肩にかけられているから、きっと優しさなんだと思う。
 こたつが来てからというもの、僕も無精になってしまった。こたつには魔物が住んでいるに違いない。仕事を持ち帰ったはいいけれど、別室にある僕専用のデスクトップパソコンに向かうのはどうしても寒くって嫌で、ウルフウッドのノートパソコンを借りることにした。彼は妙に機械音痴で、パソコンを使うことはあまりない。だからこれも僕が昔使っていたお古だ。動作はだいぶ重いけれど、簡単な作業はもちろんできる。
 コンビニまで酒とつまみを買いに出ていたウルフウッドが戻ってきた。アルコールを摂取する前だというのに鼻歌を奏でて上機嫌だ。それが、パソコンを操作している僕を見た途端に硬直する。
「おかえり」
「オンドレ……なんでワイのそれ使こうてんの」
「デスクトップいじるのには寒くってさぁ」
 ウルフウッドは部屋の入口から動こうとしない。視線を忙しなく動かして所在なさそうにしている。僕は別にいじめるつもりはないんだけれど。
「仕事もうすぐ終わるから、そうしたら返すよ」
「さよか、ほんなら良かったわ」
 テーブルの上に買ってきたものをとりあえず置くがやはり動きはぎこちない。僕は表情を変えない。ウルフウッドは腰を下ろすか逃げるか迷っているみたいだ。僕はどちらでも構わないのだけれど、折角だから捕まえておこう。
「デスクトップにある新規フォルダなんだけどさ」
 腰をかがめたままウルフウッドはビクリと震える。頭の中では逃げ口上を一生懸命考えているのだろう。可哀想だけれど、それらは多分全部、力を持たない。
「こたつの写真ばっかりだね。期待してくれてたの?」
「ち、ちゃう。それは……」
 ウルフウッドの乾いた舌は、その主を助けられるほど滑らかではない。青ざめた顔で頭を左右に振る。
 首を傾げなくなるほど彼は機械に弱い。テレビは叩けば直ると未だに信じているし、便利だからとスマートフォンを勧めたのだけれど、通話ばかりでアプリどころかメールすらあまり使用しない。そもそも面倒くさがりなのだ。そんな彼がパソコンを立ち上げてすることなど限られている。
 少し前の出来事だが、ウルフウッドは見事にパソコンにウイルスを持ち込んだ。もちろんセキュリティ対策ソフトをインストールしていたので事なきを得たのだけれど、いつもと違う画面にウルフウッドは首を傾げて僕に持ってきた。壊れたのかと、それはそれは純粋無垢な表情だった。
 少し調べたらすぐに判った。僕はダウンロードフォルダの中身を小さなサムネイルにして並べて見せた。ウルフウッドは息を止めた。
 僕だって男だ。彼の気持ちは理解できる。そりゃぁ僕という恋人がいたって、如何わしい画像や動画を見たいときもあるだろう。僕はそのことをちっとも責めはしなかった。むしろほとんど触れなかった。こういうのにウイルスにはつきものだから気をつけるようにとセキュリティ面について説教しただけだ。だがウルフウッドは正座した膝の上に強く握った拳を置いて、未成年はまだ買えない雑誌を持っていることについて叱られている中学生みたいに恥辱に耐えていた。ちなみに僕は正座を強要していない。
 それからしばらくは警戒していたらしい。ウイルスではなく僕に対してだ。データをこまめに消したりしていたみたいだが、僕はさして興味ないので探るようなことはしなかった。あれから数ヶ月経ったから、ウルフウッドも気を緩めていたのだろう。僕もただセキュリティチェックをしたかっただけなのだが、こたつに入ってあられもない姿になっている女の子の動画をいくつも見つけてしまったからにはご要望には応えてあげたい。こたつの動画や画像が増えたのは荷物が届いた日以降だ。考えなかったとは言わせない。
 僕は軽く腰を引いて、自分の膝を叩く。
「おいで、キミがして欲しいことをしてあげる」


 少しぐらい駄々をこねるかと思ったが、あっさりと隣に腰を下ろした。こっちと膝に誘導すると大人しくそこに膝を折って座る。もちろん向かい合わせじゃなくて、動画と同じように背中を向けてだ。その辺について言及すると拗ねて逃げてしまうから、無言で抱き締めて、タートルネックの布越しに項へキスを贈る。ウルフウッドは居心地悪そうに身じろぎをする。どの動画が好みか訊いて同じことをしてやろうかとも思ったが、そこまでいじめてしまうとしばらく口を利いてくれなくなる可能性があるので、ノートパソコンは大人しく閉じてこたつの隅にやった。動画はちゃんと確認はしていないけれど、そんなことしなくったってどういうのが好きかぐらい、経験でちゃんと把握している。
 こういうときのウルフウッドは無力、というか本当に子供で、いつもどうすればいいのか判らない、という態度をとる。指示してやればいいんだろうけれど、僕は勝手に先へ進む。
 セーターの裾から両手を入れると、逃げるように上体が動いた。筋肉質だからかウルフウッドの体温は僕よりずっと高い。捲っては寒いだろうとあまり裾が持ち上がらないように気をつけながら手を滑らす。彼の筋肉は密度が高く、猛獣を手懐けているみたいだ。綺麗に割れた腹筋のくぼみを指先でなぞると臍の窪みに引っかかる。そんなところばっかりのんびり撫でていると、ウルフウッドが困惑しきった表情で振り向く。その肩に柔らかく口付ける。
「どうしたの」
 ウルフウッドは答えない。自分でもなんて答えればいいのか判ってないみたいだ。少し浮いた腰を両腕で抱き寄せ、布越しに肩甲骨へ唇を押し当てる。困惑したままウルフウッドは正面に向き直り腰を落とした。そのタイミングに合わせて乳首をつまむとガクンと大きく肩が揺れる。
「い、いきなりすんなアホ」
「いきなりなつもりはないけれど。それより僕が触る前から硬くしてたけど、そんなに期待してた?」
「寒いだけや!」
「あっそ」
 じゃあ暖めてあげるねと指先で強く押し潰す。彼は否定するけれど、痛いぐらいの方が好みなことを知っている。
 流石にこの程度で声を上げたりはしないけれど、息を止めたり深く呼吸をしたりと変化は如実に表れている。やがて落ち着きなく身じろぐようになったので、胸筋から脇へと手の平を滑らし、ゆったりと降りていく。ウルフウッドは背骨と背骨の間を開くように大きく腰を反らした。もっと強い刺激が得られることを彼だって学んでいる。肌とズボンの隙間に指先を差し入れ、それぞれの手をぐるりと半周させた。親指で腰骨の縁をなぞる。
「チャック下ろして」
 ウルフウッドは慎重に息を吐き出しながらベルトを外して言われた通りにした。下着ごと脱がすと折った膝のあたりに布が溜まって窮屈そうになったけれど、まぁいいかとそこで手を離したがウルフウッドはやたらと脚を動かすものだから、子供の着替えを手伝うように片脚ずつ脱がしてやった。緩く充血しているものを片手でゆるゆると扱く。これだけではご不満だろうともう片方の手で袋を揉んでやったら閉じた口からくぐもった喘ぎ声が溢れた。顔が見えない体位なのが悔やまれる。
 芯を持ち始めると指先に力を込め、指圧マッサージでもするように根本から皮膚を強く押して、先端に向けて小刻みに扱く。うーうーと獣みたいに彼は唸る。言いたいことがあるなら言えばいいのに。背中を丸めて、今にも逃げそうな体勢だけど、腰はどっしりと据えていて、離れる気がないことを物語っている。袋を揉んでいた方の手で太腿の内側を撫でる。筋肉質だけれどここだけは少し柔らかい。緊張で彼の脚が強張る。
「腰浮かせて」
 膝に力がこもり、二人の体の間に隙間ができると、肌を伝って最奥を目指す。窪みを辿っているだけなのに、ウルフウッドの口からは堪え切れなかった声が零れた。
 一段とへこんでいるそこに指の腹で円を描く。僕がしているのはそれだけなのに、指を誘い込もうとそれ自体が一つの生き物のように呼吸を始めた。それはウルフウッドも自覚しているようで、腰を落とし始める。僕もそれに逆らわず、押されるがままに指を下げると大きな舌打ちが聞こえた。快楽で少し震えているけれど忌々しそうな声だ。
「オンドレのことを天使だ聖人だ言う人間にこの様を見せてやりたいわ。この性悪が」
「何言ってんの。僕のこんなところを見れるのはキミだけだよ」
 手の平で包んでいた熱が質量を増した。彼のことを天邪鬼だとかひねくれ者だとか言う人間にそんなことはないと見せてやりたいがダメだ。これは僕だけのだ。
 意地悪を続けるのも可哀想なので指を彼の中に潜らせる。まずは一本。強固に閉ざしていた唇は解錠され甘ったるい声が響いた。根本まで収めると何度も頷く。内壁が馴染んできたのを感じるともう一本増やした。僕は何もしていないのに抽送が始まった。ウルフウッドの息が弾む。
「指、なんやからぁ……」
「なんだから?」
「あっちじゃ、でけへんこと、色々、あるやろが」
「こういうのとか?」
 指を曲げると大きく膝が跳ねた。内側を押し広げて、二本の指を大きく開くと甲高い嬌声が上がる。気に入ってくれたみたいだ。
 長らく手持ち無沙汰であったウルフウッドの手もようやく意思を掴んだ。両手とも後ろへ回し、僕の脚だとか腹だとかを指先で叩く。やっとズボンの縁を捕まえるとホックを外しチャックを下ろす。下着の中へ指を入れて僕の先端に触れると驚いたように動きが一瞬止まったが、包み込むようにもっと深くまで手を入れてきた。この体勢では大して気持ちよくはなれないだろうけれど、してくれるというのは純粋に嬉しい。ウルフウッドは生意気なガキ大将みたいに笑う。
「ちぃとも触ってへんのにもうおっ勃てとんのか、変態」
「当たり前だろ。好きな人に触って、感じてくれてるんだから。勃つなって言う方が無理」
 指がぎゅうっと締め付けられた。黒髪に鼻先をうずめる。
 ウルフウッドのイイところをわざと避けて突っついていると、トンガリ、トンガリと督促を戴いた。髪に隠れた耳に唇を寄せる。
「ねぇ、自分で挿れてみせて」
 勢い良く振り向いた顔は赤くって眉尻が下がって戸惑ってて助けを求めていたけれど、それに応えずあっさりと指を引き抜いて、両腕でやんわりと抱き締める。目元に口付けすると観念したのか、大きく震える息を吐き出した。僕は体を後ろへ倒し、両方共後ろ手をつく。
 ちょっと拗ねたのか、やや乱暴な手つきで僕の下着を引っ張って取り出す。二三度扱くと腰を上げ、僕の先端をあてがった。
 ウルフウッドは褐色肌だけれど、日焼けしていない臀部は比較的白い。日頃は粗野な態度をとる彼が、下だけ脱いだ格好で、他の人は知らない肌の白さを晒して、赤黒く滾った僕を自らの意志で飲み込もうとしている。
 これはかなり、視覚的に、クる。
 ウルフウッドが悲鳴を上げた。
「でかくすんなアホ!」
「ごめんごめん」
 言い訳したかったが声が上ずってしまいそうで短く謝るだけにした。飲み込まれるのを眺めながら自分の唇を舐める。これだけで頭の中がチカチカする。
 すべて収めると僕達の腰はぴったりと重なる。両腕で抱き締め背中と胸もくっつけて、項にキスをいくつも贈る。唇にできないのがもどかしい。
 セーターの上から乳首を引っ掻くと全身が跳ねた。緩く首を左右に振る。
「やめぃ!」
「ヤだよ。ぎゅーぎゅー締め付けてきて具合いいんだもん」
「嫌いや、オドレなんかぁ……」
「僕は大好きだけどね」
 グズるのを無視して同じことを繰り返す。アホ、ボケ、変態と子供みたいな罵りが続いたが、そのうち大人しくなった。鼻を啜る彼に、セーターの上からと直に触るのとどっちがいいか尋ねたら、上、とだけツンとした調子で返ってきた。両の指で強くつまむ。彼の体は達するのを堪えるように縮こまる。
 片手を下肢に伸ばし、軽く握って親指で先端を擦る。溢れてくる透明な体液を塗りこむようにしていたが腕を叩かれた。一度動きを止める。
「気持ちいいでしょ?」
「今はいらん」
 再開しようとしたらさっきより強く叩かれた。諦めて今度は腰を掴む。ゆったりと前後に動かすとこっちはお気に召してくれたようで、僕が誘導しなくても自分で円を描くようにし出した。刺激としては物足りないけれど、ウルフウッドの声は甘く鼻にかかっている。腹の奥から湧き上がってくる快楽を噛み締めてるみたいだ。揺らすだけじゃなくて浅く抽送したり、動きを止めたかと思えば自分の意思で締め付けて大きな声を上げたりする。一方的なところもあるけれど、いやいや僕に付き合ってるわけじゃないってのがはっきりして嬉しい。こういうことを繰り返せば床上手になるかもしれないし。色んなプレイに興味を持ってくれるかもしれないし。積極的にサービスしてくれる日がくるかもしれないし。
 ひとしきり遊び終えると、吐く息に甘い嬌声の残滓を残して僕に寄りかかった。お腹の上で組んで待っていた手に自分のを重ねる。
「もう好きにしてええよ」
 指を解き、太腿を撫でて膝の裏を掴む。膝は折っているからこのまま動かすのはちょっと難しい。膝を立たせるように持ち上げると必然的に足先が前に伸びた。軽く突き上げると小さな声と共に親指から小指まですべてが小さく丸まる。
「可愛い」
「なにがや」
 こたつ布団を脚で持ち上げてウルフウッドの足先を中に入れてやる。意味はなさそうだけど折角だし。布団で隠れた途端に僕の脚を蹴飛ばして遊び出す。
 そんな余裕もここまでだ。大きく脚を開かせて揺さぶると、泣いてるみたいな声を上げてされるがままになる。僕の腕に縋り付くだけで精一杯だ。イイところを狙うと形にならない単語で喚く。テーブルの天板が邪魔なのが惜しい。
「こたつ見るたびに今日のこと思い出しそうだね。ねぇ、僕が欲しくなったらまたここでしてくれる?」
 これは意地悪のもつりで言った。もっとグズグズになってしまえばいい。ウルフウッドは僅かにこちらを向いた。眉尻が下がって、涙で眼が赤い。嬌声の合間に口を開閉させる。
「なぁに?」
「ワイが、ワイが欲しゅうなったら……?」
 強い快楽が全身を突き抜け呻く。痛いぐらいだ。まともに喋るのに二呼吸は要した。唇を湿らせる。それでも声が震えるのを抑えられない。
「もちろん幾らでもしてあげるよ。こたつだろうが車の中だろうが外だろうが」
 こくこくと首肯するウルフウッドにキスがしたいと告げる。向けてくれた顔に必死に首を伸ばして応え、舌を差し入れる。僕は煙草を吸わないけれど、どんな味かは知っている。唾液が溢れて顎を濡らした。
 いつもより浅い抽送だけれど僕もウルフウッドも限界が近い。布ごと項に強く噛みつく。
 ウルフウッドが悲鳴を上げて達した。絞りとるような内壁の動きに僕も中に吐き出す。ぎゅっと愛しい体を抱き締めて、背中の熱い体温を感じ取る。骨の髄まで痺れている。これはしばらく収まりそうにない。
 ウルフウッドの手を取り、指を絡めたり撫でていたりしたけれど、僕の上で呼吸を整え始めたから大きく突き上げた。困惑混じりの悲鳴が響く。
「なにすんねん!」
「一回で終わるわけないでしょ。寛がないでよ」
 達したばかりのウルフウッドは自制が効かないようで、いやいやと頭を振るのに僕を締め付けて反応を示している。抱き上げた体をテーブルに載せ、一度引き抜いた。仰向けに転がして再び挿入すると大きな嬌声を出して背中を仰け反らせる。腰を打ち付けるとそのたびに声が弾んだ。
「やっぱりこっちの方が動きやすいね」
 聞こえているのかいないのか判らないがウルフウッドは無抵抗だ。口に腕をあてているけれど、力なんて入ってないから声はちっとも抑えられていない。普段はツンツンして素っ気ないぐらいなのに、こうして僕を受け入れて、しっかり返してくれている。これで虜にならない人間がいるだろうか。似たようなことを相手も想ってくれていることは、本人からすれば不本意だろうけれど、言葉にしていないのに伝わってしまっている。
「大好きだよ、ウルフウッド」
 閉じられていた瞼が薄く開き、黒い眸がこちらを捉えた。この喜びを、表現する方法を僕は知らない。
 いつまでもこの時間が続けばいいと思うけれど、体の方はそうもいかない。一緒に達するとき、ウルフウッドは呆けた顔をしていたのを覚えている。緊張感も警戒心もなくって、僕のことを信頼しきってないと無理な表情だ。
 かけがえのない存在だって、僕は何度でも再確認する。


 お風呂の蛇口を捻って戻ってくると、こたつに潜ったウルフウッドは幼虫みたいに丸くなっていた。あれは拗ねているのだ。傍にしゃがみ、黒髪に口付けを落とす。
「お風呂の準備をしてただけだよ。一人にしてごめんね」
「なんでそんな脳天気な理由やと思えるん?」
 顔を上げるどころかますます丸くなってしまった。汗で濡れた髪を指で梳かしてやる。
「だってピロートークは大切だろう? キスもあんまりできなかったし」
 ちゅっちゅと音を立てて頭に何度もキスをする。唇にできなかった分をこの時間に取り戻したいけれど、こっちを向いてくれないのでもうしばらくお預けだ。代わりに髪に、耳に、頬にと繰り返していたら、一瞥もせずにぺちんと叩かれた。このぐらいは許して欲しい。
「お風呂で体洗ってあげるからさ、機嫌直してよ」
「如何わしい洗い方するからい嫌や」
 心当たりはあるので反論できない。名誉回復に努める必要がありそうだ。できるかどうかは別として。
 腕を伸ばし、こたつ布団の中に隠している手を握る。ぎゅっと強く拳にしていたけれど、指を何度か撫でると力を解いてくれた。広げさせ、指と指を絡める。
「ねぇねぇ、僕が誘わなかったら、キミはどうやって僕を誘い出したの?」
「誘わへんわ」
「嘘だぁ。楽しみにしてたくせに」
 肩のあたりに顔をうずめ頬ずりをする。盛大に頭突きをされた。
「ちぅかなんで終わったあとの方がベタベタすんねん。普通逆やろ」
「えぇー? してるときも僕はベタベタしてるつもりだよ」
「どこがや」
 鬱陶しいと叩いてくる腕を取りキスを繰り返していると、電子音が鳴り、風呂に湯が溜まったことを告げた。ウルフウッドの裾を掴みセーターを脱がす。すんなりと裸になってくれたけれど起き上がってくれる気配はない。両腕を手に取る。
「ほら、一緒にお風呂入ろう。そのままじゃキミだって嫌だろう?」
 ずっとそっぽを向いていた黒目がやっとこちらを向いた。でもすぐに閉じてしまう。素直じゃないというか、強情というか。一種の甘えなのだろうと、好意的に捉えておこう。
 耳に顔を寄せる。
「……足りなかった?」
 ガバッといきなり起き上がったものだから、彼の後頭部が僕の鼻にクリーンヒットした。うずくまる僕を置いてさっさと歩き出す。
「風呂。風呂な、風呂!」
 僕も立ち上がって、鼻を押さえながら後を追いかける。
「ちょっとぉ、逃げなくたっていいじゃない。それにあと一回ぐらいさぁ」
「オンドレは三回目から異様にしぃっつこくなるから嫌や」
 振り向いて憎たらしげに舌を出すウルフウッドに、僕は肩を竦めて一緒にシャワールームに入った。
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