初めてモーグリショップを見つけたとき、ティファは弾んだ声をあげた。
「可愛いっ」
「クポッ?!」
今まで緊張を張り巡らせていた反動か、彼女は警戒することなくふくよかな胸に抱き寄せた。
モーグリは息苦しいのか、短い手足をバタバタさせる。
「おおっ」
意識せず歓声をもらしたのはラグナだ。
その反応がジェクトにまで連鎖する。
「なんだ、お前さんもああいうの羨ましいのか?」
「男なら誰でも見る夢だろ」
恥じることも誤魔化こともしない答えに、ジェクトは子供をからかうような笑みを浮かべた。
「なら、ジェクト様の胸で体験してみるか?」
大きく両腕を広げて戯れを待つ。
しかしそれは来なかった。
言葉は弾切れを起こし、頬を赤くして目を逸らしたのだ。
「……素直っつーか、案外可愛げがあるじゃねぇか」
「だってそりゃぁ――足つった!」
膝を擦り剥いた子供を見下ろすように、ジェクトは唇で奇妙な弧を描く。
「しゃーねーな。湿布買ってきてやるよ」
「多めにな。あんたといるとすぐ使っちまうから」
――ついでに特別体験も。
広い背中に向けられた小さなつぶやきは、届いたか否か。
スポンサーサイト
最近のコメント