「悟浄?」

 服を着たままベッドに寝ころぶ悟浄を、焔は上からのぞき込んだ。しばらく野宿続きで疲れっているのか、シャワーを浴びた形跡はない。
 子供のような寝顔に、焔は脱力した。

「せっかく会いに来たというのに」

 焔は悟浄の上に、なだれ込むようにして覆い被さった。
 いつもの煙草の匂いと、汗の臭いが近づく。

(せめて風呂に入ってくれればよかったのに……)


 自分のより少し骨太の手に指をからめると、そこから強い熱が伝わってくる。


 自分が置いてゆく立場だと信じ切っている悟浄に、逆なのだとまだ教える勇気はない。
 こうして手を握っていられる時間は、あとどれくらい残っているのだろうか。

 できればもう少し、長引いてくれと願いながら、焔も眠りの淵へと落ちた。
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