暖かい春の気候を持つ草原でラグナとジェクトは休んでいた。ゴーストの気配がない平和な昼下がりだ。
「でさ、俺とバッツでひらし装備をどっちが早く集められるか勝負してたんだけど、なんとスコールは源氏装備ぜんぶ持ってんの。そしたらバッツが――」
「なぁラグナ、オレは寝るって言ったよな」
 自分の腕を枕にしていたジェクトは、まぶたを開け隣に座っているラグナを見上げた。いつもよりさらに緊張感のない、緩い笑顔。
「おう、聞いたぜ」
「じゃぁなんで喋ってんだよ」
 相槌など一切打っていないのにもかかわらず、のべつまくなし言葉の弾丸を放ち続けられ、ジェクトはさすがに辟易した。起きているときなら多少は可愛気を感じるが、今は完全に嫌がらせとしか受け取れない。
 しかしラグナは浮かれきっていて弾切れを起こす様子がない。
「アンタに話したいことがいっぱいあるんだよ。寝ててもいいから喋らせてくれよ」
 まるで休日のお父さんに構ってもらえるのが嬉しいといった態で、昼寝の後と言っても聞き入れてくれなさそうだ。
 ジェクトは大きなため息をつき、それを合図にした。
 上体を一瞬で起こし、油断しきっていたラグナの後頭部を片手でつかむ。
 額を合わせ、互いの吐息が重なる距離。
「黙らせるぞ」
 牙を剥き、獣の咆哮で威嚇する。それでやっと慄いたか、新緑色の眸は見開かれ声は失くした。
 その結果にやっと満足しもう一度寝転び腕を枕にした。わずかに小鳥の鳴き声だけが届く、昼寝には快適な静けさ。しかし――
「あとさ、CPがマイナスのときに、三倍のモーグリを手に入れるとさ」
「まだ懲りてねぇのかよ」
 遠慮がちではあるが確かな話し声に、顔をしかめて振り向く。そこには驚愕でも戦慄でもなく、羞恥で赤くした顔があった。
「懲りてないっていうか、黙らせて欲しいんだけど」
 目を逸らしたままのラグナをしばらく観察して、ジェクトはもう一度起き上がった。
「色気のある意味で言ったんじゃねぇんだが」
 筋肉をほぐすように両肩を回すと、やっと自分の過ちに気づいたかラグナはそろりと後退った。その腰を捕らえ力づくで押し倒す。長めの黒髪が原っぱに広がった。
「お前が誘ったんだからな」
「え?」
 間抜け面のシャツの下に手を差し入れると、バネが跳ねたように素早く全力で抵抗された。声に艶っぽさなどまったく無い。
「そこまでは誘ってないって! 今昼間だから! まだ明るいから! ここ外だからっ!」
「本っ当にうるせぇな、お前は。お、すべすべオイル装備してんのか」
「ムリッ、ムリだってぎやゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 平和そのものの草原で、ホーミングバズーカのような悲鳴がのんきにこだました。
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 初めてモーグリショップを見つけたとき、ティファは弾んだ声をあげた。
「可愛いっ」
「クポッ?!」
 今まで緊張を張り巡らせていた反動か、彼女は警戒することなくふくよかな胸に抱き寄せた。
 モーグリは息苦しいのか、短い手足をバタバタさせる。

「おおっ」
 意識せず歓声をもらしたのはラグナだ。
 その反応がジェクトにまで連鎖する。

「なんだ、お前さんもああいうの羨ましいのか?」
「男なら誰でも見る夢だろ」
 恥じることも誤魔化こともしない答えに、ジェクトは子供をからかうような笑みを浮かべた。

「なら、ジェクト様の胸で体験してみるか?」
 大きく両腕を広げて戯れを待つ。
 しかしそれは来なかった。
 言葉は弾切れを起こし、頬を赤くして目を逸らしたのだ。

「……素直っつーか、案外可愛げがあるじゃねぇか」
「だってそりゃぁ――足つった!」
 膝を擦り剥いた子供を見下ろすように、ジェクトは唇で奇妙な弧を描く。

「しゃーねーな。湿布買ってきてやるよ」
「多めにな。あんたといるとすぐ使っちまうから」
 ――ついでに特別体験も。
 広い背中に向けられた小さなつぶやきは、届いたか否か。

ティナ「ジェクトさんって、大きな熊みたいよね」
ラグナ「うん。そっくりだな」
ティナ「じゃあ、ティーダは小熊さんね」
ラグナ「う~ん、それは怒られるぞ、多分」



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